6.142014
三木松

東京の植木屋に弟子入りし、初めに最低限片付程度の事が出来る道具を
親方にそろえていただいたのですが、
その時の道具袋に入っていたのが
〝三木松”
兄弟子たちも年寄りの職人衆もみんな持っていました。
しかし、入ったばかりの時は剪定時期に、マンション等の公共的な剪定現場に回されていたため
大枝の片付をすると、非常に使いにくい。
まわりの兄弟子たちは、中屋や二見屋の鞘のこを腰に下げているんです。
三木松の鋸は腰がやわらかく日本鋸の使い方の基本
引くときに力を入れ押す時は軽くで挽かないとすぐに曲がってしまうのです。
入ったばかりで仕事の遅い自分は少しでも足手まといにならないように
中屋の鞘のこを買って片付仕事をしていました。
少しづつ仕事を覚えて、庭木の手入れをしていると、
先輩たちは、庭木に登る時は三木松を使っているんです。
剪定鋸も仕事をする木の大きさ、落とす枝の太さによって使い分けなければなりません。
手作りで作られたこの鋸は目立てを繰り返し使い込んでいけます。
当然曲がったりしたところも少しづつ直しながら使います。
親方にはじめてもらった三木松も今だ現役で出動できます。
一番上が初めての三木松。7寸普通目です。
その下が、6寸の細目。非常に安く売っている店があったので思わず買ってしまいましたが、あまり大枝を落とさない手入れの時は6寸の方が使いよいです。
一番下が今でも一番使う6寸の普通目。夏場の水をあげている時期の植木は細目だと切りカスがつまりやすいため普通目の方が使いよいですね。
右が細目で左が普通目。
このお気に入りの三木松なんですが、残念ながら鍛冶屋が店を閉めてしまったためにもう、手に入らないんです。
10年ほど前ですかね。三木松が無くなるって話を聞いて近場の三木松がある刃物屋を片っ端から回って、
やはり、人気の7寸はほとんど無くなっていて、6寸も7寸も買っておきました。
右の2丁が7寸です(普通目と荒目、荒目も他の鍛冶屋の鞘鋸ほどは荒くないです)
店により、価格もバラバラ。
一番左は論外としても、安すぎですよね。
一時期仕事仲間と、三木松の安いのがあって、替え刃式の鋸より安いから使い捨てしている人がいるって話題になったのですが、
なんか、こんなに良いものを作り続けてきた鍛冶屋が廃業したとなると、もっと上手に商売できなかったのかな?って思ってしまいます。
鋸の新品価格を上げて、替え刃式の鋸の替刃位の価格で目立て直しをして、歪みをとってくれて
長く使えるようにメンテしてくれれば良いと思うのです。
後継者がいなかったって聞きますが、良いものはそれ相応の価格で取引されれば後継者も出来たのかな?って
3倍の価格が付いていても良いと思いますよ。その代り、目立てと歪み直しをしてもらえば。
三木松は、使い込んでもきちんと鋼が入っていて切れ味の落ちない良いものです。
今使っている6寸も右側の新品デットストックの6寸と比べるとこれだけ減ってきました。
それでもまだまだ、半分も使っていないですよ。
新品を下すのはいつの日になることやらです。
使い捨ての世の中になり、大手企業的な大量生産品の刃物が大量に消費される中、
後継者に恵まれず店を閉じてしまった三木松刃物製作所。
責任保証は今後どなたがしてくれるのですか?
まあ、こいつとする仕事は間違いないですから、死ぬまで使い続けますよ。