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基本骨格剪定

植栽された樹木の剪定時期のお話です。

時期と言っても、「落葉樹は冬に剪定する」というような季節(?)の話ではありません。
植栽した時からどれくらいの時期で剪定を行うかというお話です。

某所で撮影した植栽からおそらく10年未満のカツラの写真です。

周辺にはスペースが十分あり、今後も成長し続けても周囲には影響を及ぼさないと思われます。それならば、このまま木の成長に任せて放置させれば良いのでしょうか?

広く一般に「剪定」という概念が枝を切り刻み樹高や枝張りを小さくすることと思われているような気がします。

剪定とは枝を取り除くことにより、何らかの効果がある行為です。わかり易い例ですと、果樹の枝を間引くことで、その木に生る実が大きくなったり、栄養が多く渡って味が良くなったり、花が綺麗に咲くようにしたりすることを目的にしてます。

このような公共の場では、人や車の交通に支障がある枝を根元から(←ここ大事)取り除くのも剪定ですし、落下の危険がある枯枝等を取り除くのも剪定です。

この木を見て思ったのです。「あぁ、剪定の時期だ」って。

同時に、「これを管理している人たちはこの時期に必要な剪定を理解していないかもしれないから、剪定されずに成長して、たくさんの手遅れになっている公共植栽樹木のようになってしまうかも。」とも思ったのです。

この木の場合どのような剪定をすると良いでしょうか。

 

丸で囲った部分の枝、幹が多いと思います。これを減らしていきます。

実生で種から育った高木は、上に支障物がなければすっと細長く背が高く育ちます。そのままでは、樹高に対して枝葉のボリュームが少ないため、植栽用に生産されている樹木は、幼木のときに幹の芯を止めて枝を多く吹かせます。そのため、植栽後に落ち着いたら、多すぎる立ち枝を減らす必要があります。そのまま成長すると、隣り合う幹がお互いに太りくっついてしまいます。表面上くっついていますが、お互いに支え合う力はないので、将来的に風などで折れる可能性の高い、弱い枝になってしまいます。このような枝分かれした枝を「入皮(いりかわ)」と呼びます。

入皮の内部構造の写真です。

横方向へ引っ張られる力(風などの横揺れ)で裂けやすいのがわかるでしょうか?

このようにくっつき成長してしまうと、なかなかきれいに取り外せません。また、残した幹も細く弱いので、健全な幹と成りにくいのです。
この様になる前に、くっつきそうな枝を取り払い、一本一本の枝が元気に育つように多すぎる枝を調整します。また、枝の数を減らすことで、光合成による成長力も弱められ、成長調整にもなります。

植栽後最初の剪定のタイミングとは、このように、きちんと植栽した木が根付いて、枝の成長が盛んになり始めた時期に、将来的に健全な木になるために行うべきです。若い時期に将来の枝ぶりの基本となる樹形になるように枝や幹を剪定することを「骨格基本剪定」といいます。英語では”Structual pruning”といいます。

どのような成長をするのか一枝一枝見極めて、枝を抜いていくのが剪定の基本です。

そしてその後は、葉の量を調整して、光合成による木の成長を考えながら剪定するのが剪定の基本になります。光合成による幹を強く健全な木を育てることも、いずれ書きたいと思っています。

おまけ、、

同じスペースに支柱が食い込んだカツラがありました。

4脚の鳥居支柱により囲われているので、以前に書いたシュロ縄が切れた支柱とは違い、木を支えてはいますが、木は風に煽られて、倒れないように根元を強くするので、丸太が支えきれない重さに成長したときに、倒れる可能性が高くなります。そして、丸太にあたっている部分の成長が阻害されますので、弱い幹になります。

支柱は、植栽直後に根が張るまでの仮設です。なるべく早い時期に撤去しましょう。風に揺られ、バランスを取ることを繰り返すことで、木自身がどの場所を強くしていけば倒れないのかを考えながら成長していきます。

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