7.82020
強風による街路樹の幹折れ

連日の強風と大雨で、各所で多大な被害が出ております。
自然の猛威は恐ろしくて、人間は敵わない。
と、人々は口にしながら、一方で、
人間の生活圏の近くの木々は、
倒木の危険があると、大きく枝を切断されたり、
ダメージを与え続けています。
先日の大風で街路樹が幹折しました。
通学路に枝葉が横たわっているため、緊急に撤去しました。
現場を見て、折れた箇所に違和感を覚えました。
断面のほとんどが壊死しています。
かろうじて、1/4程度が、縦方向に繊維が避けて
生きていたと思われます。(写真右奥の部分)
雨の合間に、撤去した幹を解体して死因検証です。
ポールで指した部分のみ繊維が生きている(健全な材)です。
他の部分が傷み、粘りの無い材となっています。
材が傷んでいるということは、どこからか菌が入り込み
材腐朽が広がっているということです。
空気中には、普段から、木材を傷める菌が浮遊しています。
生きている樹木は、樹皮を作り、菌が材内に入るのを防いでいます。
この防御機能が無くなった箇所、つまり樹皮が無くなった所から菌が入り込みます。
樹皮がなくなる場所というのは、風によって枝が折れたところなどですが、
この木は街路樹であるため、剪定により枝を落とされた箇所から菌が入り込んだ可能性が大です。
何気なく剪定等により枝を落としますが、樹木が防御できない箇所で枝を落とすと、菌が入り込む箇所があります。代表的なのが、太枝の切断において、ブランチカラーをきちんと残した箇所で切断する、ナチュラルターゲットカット等です。
過去記事参照
前置きが長くなりました。
要するに、剪定による幹材へのダメージどこから来ているか、
幹折れした材から探っていこうということです。
ご興味ある方は最後までお付き合いください。(長くなりそうです)
まず、折れた箇所の40cmほど上に、古い剪定後があったので、そこからの腐朽を疑いました。
さらにその脇に、不自然な膨らみがあったので、その場所の様子を見るために膨らみ箇所でカット。
膨らみは右上部分。古い剪定後です。
その上に樹皮がかぶってきちんと肥大成長を始めているので、
正しい切り口であったと考えられます。
しかし、断面をみても、右下1/5程度でしょうか、健全な材がすくないのがわかります。
古い枝を切断された箇所側の普及が多かったので、枝股部分を縦に切断してみました。
枝側が半分程度傷んでいるのがわかります。写真上側はきれいです。
枝の分かれ目付近に、菌から防御する組織が出来ていないため、
おそらく、切断された枝の先がぶつ切りにされた等の痛む要素があったと予測できます。
傷んでしまったので剪定の際に切断したのでしょう。
枝の先がもうないため、正確な原因は究明できなかったのですが、
この枝先から入り込んだ菌が、幹の強度を落したために、幹折れしたと考えられます。
原因が100%立証は出来ませんでしたが、
腐朽が広まらないような防御層ができる、正確な切断箇所、
そして、防御層を作るのに必要な組織をつくる糖類の生産がしっかり行えるだけの光合成量が確保できる葉の量が幹折等を起こさないためには必要です。
健全な樹木を作る剪定が、枝折れ、幹折れをしない安全な樹木と暮らすのには必要です。
不適切な箇所で切断しても、その影響が現れるのは5年後とか10年後なんです。
幹部分も半分ほど腐朽がすすんでいますので、更に枝先(幹先?)に向かって追いかけたのですが、その様子は次回。