8.12011
重なる枝を整理して。
我々植木屋は、今お盆前の手入れに走り回っています。
庭を手入れすること。庭を綺麗にする作業の一環として植わっている植木に鋏を入れるということは、以前書かせていただきました。
今日伺っている手入れの現場の様子を見に行き、職人に指導しているときあの人の言葉が出てきました。
日本伝統文化チャリティーワークショップで講師をされた。未生流笹岡次期家元の笹岡隆甫さん。
「フラワーアレンジメントは花を面で生けていくが、日本の生花は線で生けていく」
庭の木も幹から延びる枝の線を大切にします。そして、隣り合う木とのバランス。枝が重なり合わないように、なおかつ奥行きが出るように。そして、自分たちが庭に入らない間もお客様は庭木を眺めて楽しんでくれるのだから1年間枝が暴れないように。
最後の考え方が、結構重要です。植木の葉は、根から養分を水と一緒に吸い上げ、余分な水分を蒸発させる働きがあります。なので、夏場にあまり多くの葉を落としてしまうと、植木が自分の体内の水分を外に吐き出すことが出来ないので新しい葉を出します。たまに、耳にするのですが、「葉が多すぎて熱がっているのでさっぱりさせたい。」植木と話が出来るかのようですが、植木は動物ではなく、植物です。それこそ植木の事を考えないエゴな発言です。葉の数をなるべく多く残し、かつ、庭の中で自然樹形の美しさが保てるように懐に光を当てて、翌年や翌々年の更新枝を生育させるのが手入れです。何も手を加えないと、幹の懐に日の光が入らず枝を更新させるやわらかい枝が枯れてしまいます。たまに「植木の形が出来上がっている」などと言い。太い枝はそのままに細い枝を切り取ってしまって、ゴリゴリした感じにしてしまう方もいますが、懐の枝を大事にし、成長しすぎた枝と代替わりさせることで、庭の中でもある手度自然のやわらかい樹形をたのしむことが出来ると思います。
また、植木の手入れは一本で考えないこと。庭全体の雰囲気を作り上げるのが作庭ですから、作庭した時の意思を受け継ぎ、全体の雰囲気を作り上げるのが手入れです。
職人がやった所、枝を落としすぎないように注意したのか、低木をおろそかにしたのかわかりませんが、枝垂れ梅とシャクナゲの枝が重なりすぎていいたのでせっかくの後ろの生垣が見えなく、そのことによって遠近感が出にくくなってしまっていました。
上から下がってくる枝垂れ梅の枝と、下から延びてくるシャクナゲの枝が重なりすぎています。これでは1本1本の枝ぶりの線の美しさが味わえない。
枝垂れ梅の枝垂れている枝ぶりを大切にしつつ少し詰めて、シャクナゲも少し背を落とします。
たった、4~5回鋏を入れるだけで、枝垂れ梅の枝ぶりが強調され、なおかつ奥の生垣が借景とし見やすくなったので庭に奥行きが生まれたと思います。
植木の剪定の仕方。のような本を読んでも植木一本一本の剪定方法が乗っているだけです。我々は、庭手入れとして植木と接しているので、その植木が植わっている環境。その周りの環境でどこに太陽の光を当て、どこに影を造るのか。日当たりなの好きな植物、日陰の好きな植物成長の早いもの、遅いものを調整することが手入れであるとして、作業します。
株式会社髙樹園
Facebookページもよろしく